上演時間を60分以上にした秘策
―本当は1時間半の作品になる予定だったとのことですが。
健太朗:上映時間は61分ですが、本当は90分くらいになる予定だったんです。編集が終わるとさらに減って57分になってしまって。クラウドファンディングで長編を作ると宣言したので、どうやって60分以上にしようかなと。
ガク監督:追加撮影はできないので、いろいろ考えた末に“とある物を入れる”という作戦を思いついたんです。ネタバレになってしまうので言えませんが(笑)
健太朗:映画の上映会でもそこの場面が好評だったので、もし最初から90分で完成していたら生まれなかったシーンなんです。
ガク監督:僕も最終的に観た時に、やっぱり入れて本当に良かったなと思いました。さっきの主役に見せるにはどうしたらいいかという遺体の話じゃないですけど、制限がかかるというか、困難にぶつかった時に打開策を考えると大体良くなる。本作はそういうことが多かったですね。
―製作段階から米寿を迎えるタイミングを狙ったのでしょうか。
浩子:公開中の5月15日に本当に米寿を迎えることと、『米寿の伝言』というタイトルがついていますが、「88歳」をすごく意識して動いてたわけではないんです。舞台も81歳でスタートしたので、いずれ米寿になるときに元気でいてくれたらいいなくらいで。たまたま映画館で上映できるという話をいただいて、どうせだったら米寿を迎えるときにできたらいいなと思いましたが、うまく決まりました。撮影時は85歳だったのでもっと早くに上映していてもおかしくなかったのですが、不思議とこのタイミングになりました。
―土屋太鳳さん、北村匠海さん、松岡茉優さんなど豪華な著名人からの応援コメントが話題になっていますが。
浩子:銀二郎が出演したドラマや舞台での共演者の方が多いですね。ありがたいことに沢山の方にかわいがっていただいているので、本当に温かいコメントを寄せてくださって感激しています。吉田鋼太郎さんは、健太朗も銀二郎も共演させていただいたことがきっかけで仲良くさせていただいているんです。
―これからご覧になる方々へメッセージをお願いします。
ガク監督:奇妙な家族の言い出しで生まれた映画なんですけど、僕が言うことでは本当にないと思いますが、本当に形にできるんだなって、僕がカメラの前でそれをとても感じていたので、みなさんにも伝わればいいなと。家族を大事にという部分もそうですが、それよりも思い描いたことが叶うんだなっていうことが僕はいちばん伝わってほしいので、エールになれば嬉しいです。
浩子:最初、これをやりたいって言ったときは、本当に自分の好奇心とお父さんが大好きだからという思いだけで、親孝行しようとかはまったく考えていませんでした。役者をやっている父を見たいっていう一心で。家ではぼんやりとしている父が、舞台に上がるとすごくキラキラしている様子を見て、やっぱり生きてる間に実現できて本当に良かったなと思ったので、本作を観た誰かの背中を押せたら。生きてる間にちょっと親子で話そうよということを今はいちばん伝えたいですね。
健太朗:本作では、僕と弟の信頼できるスタッフさんや役者さんが本当に集まってくださって。僕らの“家族事”を「面白そう!」と手伝ってくださっただけで感謝でいっぱいです。観てくださる方にはストーリーももちろんですが、どういう経緯で作られたかという部分も含めて「自分も親孝行したいな」とか「今日親に電話しました」という感想をいただいたときに、心を動かせる作品なんだと実感できたので、そんな優しい世界のきっかけになればいいなと思っております。
『米寿の伝言』(C)米寿の伝言
『劇場版 米寿の伝言』は5月10日(土)より池袋シネマ・ロサ、6月6日(金)よりTOHOシネマズ梅田ほか全国順次公開