かけがえのない9年の物語
そんな永野の振り幅の広い演技も堪能できる本作は、「ママはテンパリスト」「海月姫」「東京タラレバ娘」など数々の大ヒット作を生み出してきた、漫画家・東村アキコによる同名漫画が原作。漫画家を目指す明子とスパルタ絵画教師・日高先生(大泉)とのかけがえのない9年の物語は、東村が泣きながら描いたという自身の実話だ。
高校生の明子が日高先生と出会い人気漫画家になっていくまで、そして観る者の心を打つ恩師との感動的な出会いと別れが描かれていくが、プロデューサーの加藤達也は、「本作は、高校生から大人になるまで、ある種、東村アキコさんの一代記的な側面もあるお話です。原作の持つコミカルな部分と先生との切ないお別れなど、世代も超え感情の表現する幅も広く、非常に難しいお芝居が必要になる作品でした」と説明し、明子役を永野へオファーした理由についても次のように明かしている。「この高度なお芝居を誰がやるのかと考えた時に、永野芽郁さんしか考えつきませんでした。ビジュアルも直感ですが、絶対に似合うなとも確信しておりました」
公開された写真からも伝わるように、時には感情をむき出しにするような振り幅の広い演技も求められていた永野だが、彼女は本作の中でも印象的なシーンの一つとして、絵が描けずにスランプになった明子が自暴自棄になり、自宅で暴れ回るシーンでの撮影を挙げている。永野は「誰しも向き合いたくない瞬間はあると思います。それが明子にとっては絵だと思うので、それでも(日高先生から)“描け!”と言われて。どうしようもなくただ泣けてくるという、あのシーンはすごく理解できました」と自身の経験や記憶をめぐらせながら回顧。
「向き合うのはとても大変だろうなと思ったら、気づいたら涙が止まらなくて。明子は喜怒哀楽がしっかりある人ですが、その喜怒哀楽にもそれぞれ理由があって、共感しながらお芝居できたと思います。そのぶん私自身も自分の感情を解放できた気がしますし、本当に一人の人生を生きた気がします」と自信を見せている。
そんな永野の姿を側で見守っていた加藤プロデューサーも、「時たま先生に質問することなどはありましたが、明子を演じるにあたって自分の中ではっきりとしたイメージをお持ちでした。迷いなく、集中して挑まれている印象があります。ご自身もおっしゃっていましたが、ミスが本当に少なく、テスト、本番と、映画の明子を体現されたお芝居で、監督もモニター前で唸ることがあるくらい圧倒しておりました」と手放しで称賛している。
『かくかくしかじか』©表記:©東村アキコ/集英社 ©2025 映画「かくかくしかじか」製作委員会
『かくかくしかじか』は5月16日(金)より全国ロードショー