• BANGER!!! トップ
  • >
  • 映画
  • >
  • 【永久保存】巨匠ジョージ・ルーカス濃厚トーク完全レポ! カンヌで「映画人生」振り返り盟友コッポラと抱擁【超貴重】

【永久保存】巨匠ジョージ・ルーカス濃厚トーク完全レポ! カンヌで「映画人生」振り返り盟友コッポラと抱擁【超貴重】

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook
ライター:#まつかわゆま
【永久保存】巨匠ジョージ・ルーカス濃厚トーク完全レポ! カンヌで「映画人生」振り返り盟友コッポラと抱擁【超貴重】
ジョージ・ルーカス、フランシス・フォード・コッポラ 第77回カンヌ国際映画祭(撮影:まつかわゆま)
1 2

「自分が若いころ夢中になっていたものを撮ってみたのが『アメリカン・グラフィティ』」

ゾエトロープ・スタジオの1作目として『THX-1138』を長編にして作ることになった。ウォルター・マーチに手伝ってもらって完成させたのはいいけれど、さて、どうしよう……というときに、カンヌ映画祭の監督週間(※作家性のある監督が世界に出ていく登竜門的部門)を知ったんだ。

THX-1138 ディレクターズカット (字幕版)

PrimeVideo『THX-1138 ディレクターズカット (字幕版)』No Rating © 1970/Renewed © 1998, THX 1138 The George Lucas Director’S Cut © 2004 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

 

とにかく、カンヌに行ってほかの国の若い監督たちの映画を見てみようぜ、というつもりでね。何が必要かとか、いくらかかるかとか考えもせず、カンヌに来たわけだ。パスもチケットもないから、会場に潜り込んで観ていたんだよ(笑)。あとになってジャーナリストに、「なぜ『THX-1138』のプレス・カンファレンスに出てこなかったのか?」と聞かれたんだけど、そんなものがあることさえ知らなかった(笑)。

「何を作りたいのか」と聞かれては、「1920~30年代のSF、『フラッシュ・ゴードン』みたいなのを作りたい」って言っていたよ。でも、当時は『イージー★ライダー』(1969年)ショックの時代でね、バッド・エンディングが流行っていたんだ。スタジオは、若者を劇場に呼ぶにはどうすればいいかわからなかった。ロジャー・コーマンが若い映画学生の監督を雇って、低予算で映画を作らせていたよ。

ゾエトロープも若い会社だったし、フランシスは『ゴッドファーザー』(1972年)にかかりっきりで、スタジオとしょっちゅう揉めていた。ならば若者が見たいものを、自分が若いころ夢中になっていたものを撮ってみようと『アメリカン・グラフィティ』を撮った。ユニバーサルはギリギリの予算と時間しか許さなかった。

ところが、これが大ヒットになったんだ。といっても、最初ユニバーサルは乗り気ではなかった。誰もスターが出ていないし、観客は喜ばないだろうって。そこでプレビューに条件を出した。「フィルム・ピープルやマーケッティング・ピープルを排除して、一般のお客を入れて大スクリーンの劇場でプレビューをしてほしい」ってね。

アメリカン・グラフィティ (字幕版)

PrimeVideo『アメリカン・グラフィティ (字幕版)』©1973 Universal Studios. All Rights Reserved.

 

これがすごかった。観客はロックコンサートのようにノリノリだったんだ。だが、それでも会社は信用しなかった。観客が枯れる8月に、たった15スクリーンで公開したのさ。ところがロングランした上に、100億ドルを超えるヒットになった。アカデミー賞にもノミネートされたしね。これにはみんな驚いた。自分たちも会社も、映画界も。それで(映画プロデューサーの)アラン・ラッド・Jr.が、「何をやりたい? 次は一緒にやろう」と言ってくれたんだ。

――ここでやっと話題は『スター・ウォーズ』サーガに到達する。すでに80分が経過していた。

「(『アメ・グラ』について)僕は好きだ」とアラン・ラッド・Jr.は言ってくれたんだけれどね、当時は時代が暗かったから。ベトナム戦争が続いていたし、スタジオの経営は行き詰まっていた。SFのスペースオペラなんて誰が見たいものかと、どの会社も門前払いさ。ばかばかしい、子供だましの活劇なんて古臭いものを、というわけだ。

スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望 (字幕版)

PrimeVideo『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望 (字幕版)』

「『スター・ウォーズ』は子供たちが見たいと思っている物語、彼らに見せたい物語なんだ」

――最終的にラッドが20世紀FOXを説得して作れることになったわけだが、とんでもない苦労の連続だったことは、よく知られているだろう。時間も限られているので司会は撮影の苦労話はスキップして、最後の音入れ、つまりジョン・ウィリアムズの起用について話を振った。

音楽について、スティーヴン・スピルバーグに相談してみた。フルオーケストラで『ピーターと狼』(1947年)みたいな感じにするか、またはジャズなんてどうだろう、ってね。するとスティーヴンは言った。「クラシカルな映画にはクラッシック音楽じゃないと。『JAWS/ジョーズ』(1975年)を見たろう? ジョン・ウィリアムズを紹介するよ」ってね。音楽は映画の秘密の隠し玉みたいなものなんだ。予算の25パーセントを音楽にかけたっていいくらいさ。

――確かに、ジョン・ウィリアムズの“あのテーマ”なしの『スター・ウォーズ』なんて想像できない。

観客は大喜びしてくれた。けれど批評家は叩くんだよ。「キッズ・ムービーだ」って。そうだよ、『スター・ウォーズ』はキッズ・ムービーなんだ。10歳~16歳の子供たちが見たいと思っている物語、彼らに見せたい物語なんだ。ダークな時代に、友達や兄弟が棺に入って帰ってくるような時代に、子供たちに何が大切か、映画で何を見せてやりたいのか、だと思うよ。

「黒人が出てこない」なんて言われることもあった。ランド・カルリジアン(演:ビリー・ディー・ウィリアムズ)は重要な役だし、複雑な人物じゃないのか? 新三部作のサミュエル・L・ジャクソン(メイス・ウィンドゥ役)は最高位のジェダイで、紫のライトセーバーを使う人物だ。人種差別的だなんて意見も出るが、『スター・ウォーズ』の世界ではみんなイコールな存在なんだよ。

人間もエイリアンも、どこの星の住人だろうと部族だろうと、みんな同じ存在であることが大事なんだ。どこから来ようと、どんな見かけをしていようと、みんな同じ生命なのさ。子供たちにも、そこのところをわかってほしいと思っている。それから「女性が描けていない」とも言われるけれど、じゃあレイアはどうなんだと言いたいね。彼女は反乱軍のリーダーであり、誰よりも賢く、勇気があって実行力もある。オール・ウーマン・キル・エブリバディ、ということなんだ。

――『スター・ウォーズ』の公開された時代はフェミニズムが進んでいく時代でもあった。アメリカの70年代フェミニズムでは、男女平等の行き着く先は「オール・ウーマン・キル・エブリバディ」であったかもしれない。ここにはちょっと違和感を感じたが、レイア姫は戦争下の兵士でもある。引き金を引くのに躊躇してはいられない。

「黒澤は天才だ。だから新作をコッポラとプロデュースすることにした」

――ディディエは聞く。「『スター・ウォーズ』のない世界は想像できますか?」。ルーカスはこう答える。

もう、ほとんど来ているね。67歳になったときに考えたんだ。これから先、79歳になっても『スター・ウォーズ』を作っていくのか? と。それで、手放す時が来たと思った。新しい暮らしをしよう、とね。アイデアはまだまだあったよ。でも、あきらめることにした。

――2012年、ルーカスは<ルーカス・フィルム>をディズニーに売却した。

『帝国の逆襲』が終わったあたりから、他に何をしたいか考えるようになって、“才能のある人を助けたい”と思った。今ならそれができる、ってね。

そんな時、黒澤明が時代劇を作りたがっていると知った。黒澤は天才だ。でもスタジオはやりたがらない。馬がたくさん出るので金がかかるから、って言うんだ。それはおかしい。絶対に作られるべきだと思った。それでフランシスとプロデュースをすることにした。配給権を、日本国内は日本で持ち、海外のセールを僕らが持つという条件でね。それが『影武者』(1980年)だ。

――他にもポール・シュレイダーの『MISHIMA』(1985年)、ハスケル・ウェクスラーの『ラティノ』(1985年)、ジム・ヘンソンの『ラビリンス/魔王の迷宮』(1986年)などなど、ルーカスがエグゼクティブ・プロデューサーとして制作を支援した作家や作品は数多い。

ラビリンス 魔王の迷宮 4K ULTRA HD & ブルーレイセット [4K ULTRA HD + Blu-ray]

「ラビリンス 魔王の迷宮 4K ULTRA HD & ブルーレイセット [4K ULTRA HD + Blu-ray]」TM & ©1986, 2005 THE JIM HENSON COMPANY. LABYRINTH IS A TRADEMARK OF THE JIM HENSON COMPANY. LABYRINTH CHARACTERS ©1986 LABYRINTH ENTERPRISE. ALL RIGHTS RESERVED.

僕はね、映画を作りたいんだ。金儲けをしたいんじゃない。それはずっと変わらない。才能があって、映画を作りたがっている人がいれば、作ればいい、僕が助けるよ、ということだ。どこから来ようと関係ない。僕たちの仲間、同時期に学生で映画を作りたがっていて、お互いによく知っている仲間たち、フランシス、マーティン・スコセッシ、スピルバーグはみんなそう思っていると思う。

共通しているのは、“自分が好きだから作る”というところだね。プレビュー(※反応を測るための事前試写)とかフォーカス・グループ(※情報収集のための少数顧客グループ)とか、マーケティングがリードするようなシステムは嫌いだ。そんなもので本当に観客が求めているものなんてわからないよ。『スター・ウォーズ』がそれを証明している。インベストメント(※投資、株式購入)なんてしちゃいけない。無駄だよ。

第77回カンヌ国際映画祭「ランデヴー・アヴェック ジョージ・ルーカス」(撮影:まつかわゆま)

こういうことを言うと、スタジオの人間は「君たちはわかっちゃいない」と言うけれど、フランシスをごらんよ、また作っているじゃないか(笑)。好きなものを、作りたいから、作る。そのパッションが大事なんだ。

――満場の観客の拍手と歓声、口笛が、ドビュッシー劇場に響き渡る。永遠の映画少年ルーカスをたたえて。この観客の中からルーカスやコッポラ、スピルバーグやスコセッシに続く映画作家が誕生していくに違いない。

取材・文・撮影:まつかわゆま

1 2
Share On
  • Twitter
  • LINE
  • Facebook